はじめに
中国市場といっても香港、上海、深センの大きく3つの市場があります。香港市場の株は一般に香港株といわれ上海市場、深セン市場の株は一般に中国本土株といわれます。今回はそれぞれの市場の区分けや上場銘柄数などの特徴を見ていき、さらに各市場の取引時間について詳しく見ていきます。
そして各市場の呼び値の範囲や売買単位、値幅制限や休場期間について取り上げます。
市場の特徴
香港、上海、深セン市場
上でも述べましたが中国の市場は香港市場と、本土市場の上海市場、深セン市場の大きく3つに分類されます。本土市場は中国人専用のA株市場と、外国人向けのB株市場に分かれます。取引できる銘柄数の数は圧倒的にA株市場のほうが多いです。
外国人でも本土A株市場の取引が可能に
これまでA株市場は中国人しか取引できませんでしたが、2014年11月から開始された「滬港通」(上海・香港・ストック・コネクト)により、外国人でも上海A株市場の株式を取引することが可能となりました。さらに2016年12月からは深港通(深セン・香港・ストック・コネクト)も始まり、これにより深センA株市場の株式も取引が可能となりました。詳しくは
上海A株と深センA株が買える証券会社の手数料と取扱い銘柄についてご覧ください。全銘柄のうち約半数以上の銘柄で取引が可能なようです。
香港市場の分類
香港市場は本土市場と比べると分類がやや複雑です。まずは通常の市場であるメインボードとベンチャー向けのGEMという市場があるということをふまえておいてください。その上でメインボード、GEMそれぞれにH株、レッドチップ、その他という区分けが有ります。H株とは香港市場に上場している中国本土企業の株式銘柄です。
レッドチップ
レッドチップの定義はやや複雑で、中国本土の国有企業や地方政府の支配・管理下にある事業体が、当該企業の株式を直接的・間接的に30%以上保有しており、筆頭株主であるものをレッドチップといいます。このほか20%以上30%未満の保有率でも、当該企業の取締役会に強い影響力を持つ中国本土と強いつながりを持つ個人がいる場合もレッドチップ銘柄となります。ちなみにこのレッドチップというのはアメリカの優良企業を指す「ブルーチップ」からきていて、中国共産党のイメージカラーが赤なのでレッドチップと名前がつけられました。
市場
|
上場数
|
取引通過
|
上場企業の特徴
|
上海市場
1150社
|
A株 1098社
|
人民元
|
中国人専用です。中国本土の企業が上場してます。
|
B株 52社
|
米ドル
|
外国人も取引可能です。中国の代表的な企業などが上場しています。
|
深セン市場
1819社
|
A株 1770社
|
人民元
|
中国人専用です。上海市場よりもやや知名度の落ちる企業が上場しています。
|
B株 49社
|
香港ドル
|
外国人も取引可能です。中国の代表的な企業などが上場していますが、上海市場に比べると企業の知名度はやや落ちます。
|
香港市場
1902社
|
メインボード 1666社
|
香港ドル
|
香港市場に上場している企業。
|
H株 208社
|
香港市場に上場している中国(本土)企業で登記が本土にあるもの。国有企業が多い。
|
レッドチップ 146社
|
香港市場に上場している中国本土企業の香港法人。
|
ハンセン 50社
|
香港市場に上場している中国企業のうち、ハンセン指数に組み込まれている企業。
|
GEM 236社
|
ベンチャー市場。IT銘柄が多い。
|
香港市場の構成
香港市場
|
メインボード
|
H株
|
レッドチップ
|
香港その他
|
GEM
|
H株
|
レッドチップ
|
GEMその他
|
取引時間
取引時間は日本と1時間の時差あり
中国本土と香港ではそれぞれ取引時間が異なります。また中国と日本では時差があり、現地時間は日本時間よりも1時間遅れています。立会時間にはプレオープニングセッション、前場、後場があります。プレオープニングセッションは取引時間(ざら場)の前に開かれ、公正な寄付値(最初に成立した値段:初値)を決めるために行われるものです。
クロージング・大引板寄せとは?
香港市場のクロージング・オークションや深セン市場の大引板寄せは公正な終値を決めるために行われるものです。この時間まで注文することは可能です。上海市場と深セン市場はプレオープニングセッションから前場・後場までほぼ時間は同じですが、深セン市場は大引板寄せの時間を設けているため、後場の時間が上海市場と比べると3分短くなっています。
|
立会時間(日本時間)
|
プレオープニング
|
前場
|
後場
|
クロージング、大引板寄せ
|
上海市場
|
09:15〜09:25
(10:15〜10:25)
|
09:30〜11:30
(10:30〜12:30)
|
13:00〜15:00
(14:00〜16:00)
|
-
|
深セン市場
|
09:15〜09:25
(10:15〜10:25)
|
09:30〜11:30
(10:30〜12:30)
|
13:00〜14:57
(14:00〜15:57)
|
14:57〜15:00
(15:57〜16:00)
|
香港市場
|
09:00〜09:30
(10:00〜10:30)
|
09:30〜12:00
(10:30〜13:00)
|
13:00〜16:00
(14:00〜17:00)
|
16:00〜16:10
(17:00〜17:10)
|
各証券会社の香港、上海、深セン市場の取引時間
証券会社では数分早めに締め切る場合も
取引時間は各証券取引所での時間で、日本国内の証券会社を通して注文する場合は、注文締め切り時間が3分から10分程早めに設定されている場合があります。この場合はぎりぎりだと注文が間に合わない可能性がありますので、あらかじめ確認しておいてください。以下は各証券会社の取引締め切り時間です。
上海市場、深セン市場では楽天証券が16:00まで取引でき、次いで内藤証券が15:57まで取引できます。香港市場では楽天証券とSBI証券が17:10まで取引できます。両者は各市場の取引時間と同じ時間帯で利用できますが、その他の証券会社では少し早めに注文を打ち切るので注意が必要です。
| 上海、深セン |
香港 |
内藤証券 | 15:57 | 16:57 |
アイザワ証券 | 15:45 | 16:55 |
東洋証券 | 15:50 | 16:50 |
楽天証券 | 16:00 | 17:10 |
SBI証券 | - | 17:10 |
マネックス証券 | - | 17:06 |
取引時間外でも注文はできる
ちなみに香港、上海、深センの各証券取引所の開始時間は決っていますが、国内の証券会社を通して中国株を買う場合は、開場時間外であっても注文自体は受け付けています。受け付けた注文は翌日のオープニング・セッションでの注文に回されます。
証券会社を取引時間で選ぶなら
証券会社を取引時間で選ぶならまずは香港市場の場合は、楽天証券やSBI証券が17:10までと長いのでお勧めです。この両社は手数料も安く取り扱い銘柄数も充実しています。
楽天証券、
SBI証券
中国本土株だとこちらこちらも楽天証券の取引時間が最も長いです。ただし上海株、深セン株などの取扱銘柄数では内藤証券が圧倒的に多いので、取引時間は楽天証券と比べると3分ほど短いですが、銘柄数も含めて考えるなら内藤証券がおすすめです。
内藤証券
呼値
上海、深セン両市場の呼値はそれぞれ0.001米ドル、0.01香港ドルと一律なのに対し、香港市場の呼値は株価によって変化します。呼値とは注文する際の最小単位のことです。例えば香港市場で0.50超〜10.00の範囲の株価の注文を出す場合に、呼値は0.01なので0.51、0.52という金額を指定して注文することになります。それより細かい0.512や0.523などの金額を指定することは出来ません。上海や深セン市場であれば呼値は一律なので迷うことは有りませんが、香港市場の場合は、株価によって呼値が異なるので注意が必要です。
市場
|
株価
|
呼値
|
上海A株市場
|
|
一律0.01元
|
上海B株市場
|
|
一律0.001米ドル
|
深センB株市場
|
|
一律0.01香港ドル
|
香港市場
|
0.01〜0.25(香港ドル)
|
0.001香港ドル
|
0.25超〜0.50
|
0.005
|
0.50超〜10.00
|
0.010
|
10.00超〜20.00
|
0.020
|
20.00超〜100.00
|
0.050
|
100.00超〜200.00
|
0.100
|
200.00超〜500.00
|
0.200
|
500.00超〜1,000.00
|
0.500
|
1,000.00超〜2,000.00
|
1.000
|
2,000.00超〜5,000.00
|
2.000
|
5,000.00超〜9,995.00
|
5.000
|
売買単位
売買単位は上海、深セン市場はともに100株で、香港市場は大半が2000株となってます。
単位未満株(端株)の取扱いについては、中国本土市場と香港市場で大きく異なります。株式分割や、無償増資などにより発生した端株は、中国本土なら1株単位での売り注文が可能です。香港市場では、端株の取扱が、通常の単位株と異なり、端株市場での売買となります。注文は成り行きのみ可で、ディスカウントされた時価より安い値で取引されます。(ディスカウント率はその時その時で違います。)端株の取扱はフォームや電話での受付など証券会社ごとにまちまちです。
市場
|
単位株数
|
端株の売買
|
上海市場
|
100株単位
|
同一市場
|
深セン市場
|
100株単位
|
同一市場
|
香港市場
|
2000株単位が大半
(銘柄ごとに異なる)
|
端株市場
|
値幅制限
上海、深セン両市場の値幅制限はともに±10%となってます。香港市場には値幅制限がありません。1日で大きく変動するというリスクもありますが、企業価値を適正に株価に反映させるという意味では進んだ市場制度だともいえます。
このほか、本土市場にはST(Special Treatment)制度といった中国独特の仕組みがあります。ST銘柄に指定されると値幅制限が±5%になります。ST銘柄は以下の条件などに該当した場合に適用される制度です。
1.直近1会計年度で債務超過に陥る
2.決算に不備があったり会社経営が不安定化した場合
|
これまではPT銘柄といって、翌年も赤字になった企業が指定される制度があったのですが、これは廃止されました。ST銘柄は国有企業の場合、国からの支援やリストラなどが期待されるとして投機的な資金が集まりやすい側面があるのですが、3年連続で赤字になると上場停止となり、さらに半年後の中間決算でも黒字化できない場合は上場廃止となりますので、初心者の方は避けたほうが無難だといえます。
さらに2003年5月12日から新たに*ST(スターST)制度が採用されるようになりました。これはST銘柄よりもさらに上場廃止の危険性が高い銘柄に適用され、次の上限のどれかひとつに該当する場合がそれになります。
1.直近2年度で連続して赤字を計上した企業。
2.決算書の重大な誤りや虚偽の記載につき中国証券監督管理委員会(CSRC)に修正を指示されるか、または自主的に修正を行なった結果、直近2年度がいずれも赤字になった企業。
3.決算書に重大な誤りや虚偽の記載があり、CSRCに修正を指示されたものの、定められた期間内に修正を行うことができなかった企業。
4.法令や取引所規則などで定められた期限までに中間期決算、期末本決算を発表しない企業。
5.上場停止措置を解除された銘柄に関しては、上場復帰後の第1回本決算発表を公表するまでの間。
6.取引所から認定された他のケース。
|
中国ではこれまで国有企業でいくら赤字が続いても、上場廃止されることがありませんでした。しかし2001年度にはじめて上場廃止企業があらわれ、より適正な株式市場になるべく上場廃止制度の充実が図られている現状です。
市場
|
通常株
|
ST銘柄
|
上海市場
|
±10%
|
±5%
|
深セン市場
|
±10%
|
±5%
|
香港市場
|
制限なし
|
-
|
各取引所の休場
各取引所ともに土曜日と日曜日の休日に加え、上海、深セン市場は中国本土の、香港市場は香港の祝祭日が休場となります。祝祭日は新年(1月1日)、春節(1月下旬から2月中旬頃)、メーデー(5月1日)、国慶節(10月1日)などあります。(休場期間は毎年変更されます。)
・内藤証券・各市場休場スケジュール