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投資環境
vol2

人民元の切り上げ問題


これまでの為替政策
中国では1978年12月の「改革開放」以前まで、中国政府が独自に設定した「公式レート」を採用していました。改革開放以後はこれまでの公式レートに加えて、市場の需給によって決まる「市場レート」も取り入れ、2本立てて運営してきました。

1994年1月、政府はこれまでの2本立てのレートを統一して「管理フロート制」と呼ばれる制度を新たに導入しました。基本は市場の需給によって決定されますが、必要に応じて中国人民銀行(中央銀行)が介入するという仕組みです。しかしながらこれは名ばかりで、実質ここ数年の変動幅は、1ドル=8.2760元―8.2800元の範囲内に収められており、これはまさにドル・ペッグ制そのものだといえます。ペッグ制とはドルに対して通貨が固定された仕組みのことです。

人民元切り上げ要求の背景
各国が人民元の切り上げを要求する背景には次のような理由があげられます。

1. 中国は毎年10%近い経済成長を続けているにもかかわらず、通貨は何年も固定されている。既にかなりの割安な状態である。
2. 中国の外貨準備高が3400億ドルに増大。さらにアメリカの中国への貿易赤字が1040億ドルにふくらんでいる。こうした貿易不均衡の解消。
3. 中国の安価な製品が世界中に浸透し、各国のデフレを加速させている。

中国の急速な経済発展、それによる世界経済への影響、存在感というのが各国にとって無視できないレベルにまで達してきたことのひとつの現れでしょう。

中国が切り上げを拒否する理由
中国の経済発展は国内市場はもちろんのこと、海外への輸出の拡大もその一因となっています。輸出の拡大は割安な為替レートを武器にしてる部分も多く、元の切り上げは当然輸出にも大きく影響してきます。そうなると経済成長は鈍り、また企業業績の悪化で失業率の増大も心配されます。現状ですら都市部で4.1%(実質はもっと高い)、農村部に到っては1億人とも言われる余剰人員を抱えている状況です。農作物の輸出にも当然影響を受けるでしょうから、更なる余剰人員の発生もいないめません。こうしたことから深刻な社会問題に発展することも考えられます。

また国有の4大商業銀行をはじめとした中国の金融機関は、膨大な不良債権を抱えています。さらに欧米や日本に比べ金融システムも脆弱であるため、これら金融機関が急激な元の切り上げに対応できずに金融不安を招くのではないかということ危惧しているのです。

とはいえ、中国の世界経済での存在感も日に日に増してきている現状では、国内事情だけを持って固定相場を維持させつづけることは困難でしょう。中国政府としては、変動幅の拡大などの手段で、急激な元の切り上げを回避して、緩やかな元の上昇をはかりたい公算ではないでしょうか。

アメリカの思惑
アメリカが人民元の切り上げを迫る理由は、貿易赤字などの他に政治的側面も無視できません。アメリカの貿易赤字は何も人民元の為替政策だけが理由ではないです。むしろ対外直接投資の拡大、個人消費の拡大、ドル安なども大きな要因です。アメリカが声高に人民元問題を取りあげる理由には選挙が近いということも関係しています。冷戦後のアメリカでは選挙のたびに中国がやりだまにあげられてきました。中国を批判することで国民の支持を仰ぎたい意図の表れでしょう。選挙がおわれば決まってアメリカ政府は中国との関係改善に走っています。

アメリカの取る行動としてどのような強硬手段が考えられるでしょうか? 部分的、対象を限定したダンピング処置(家電や繊維など)や高関税政策、もしくは中国からの輸入品全部に高関税をかける超強硬手段などが考えられますが、これは現実的ではないでしょう。

中国としてもそうなれば当然対抗手段に打って出ることが予想されます。同じくアメリカからの輸入品に対して高関税をかけるなど考えられますが、他にも中国はアメリカに対して1200億ドル以上もの米国債を保有していて、もしこれが売却されれば、アメリカの長期金利は急騰して、財政を圧迫するでしょうし、金利の上昇は企業活動にも大きな影響を与えます。

中国側も、米国は最大の輸出市場であり、経済成長を最優先する中国にとって、そのような対立は望む所ではなく、是が非でも回避したい所でしょう。

双方そのような理由から、何らかの妥協案でおちつくのではないでしょうか。まずはアメリカの貿易赤字を軽減する意味でもアメリカからの輸入拡大に努める。また為替レートの現在の変動幅を拡大して、緩やかな元の切り上げに努める。そして近い将来の元の変動相場制への意向を約束するなどの案が考えられます。

元の切り上げの影響
元の切り上げにより輸出産業などが影響を受け外需の拡大による経済成長も失速することが危惧されます。政府としては公共事業などの拡大による内需の押上でそれら落ち込みを補う政策に打って出ることが予想されます。そこで内需関連の銘柄が恩恵を受けることが期待されます。

また元の切り上げによって対外債務能力が向上するので、国の信用度も高まり、海外からの投資の呼び水となることも期待されます。



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text 2003/10/22







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